DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が定期的に行っているウェブキャスト「Gundlach  Unlocked」の中から、気になった3つの論点をあげてみたいと思います。

1.気になった論点

①2年債利回りがFFレートを上回っている
まず、米国2年債利回りとFFレートの関係です。
ガンドラック氏は、現在、2年債利回りがFFレートを上回っていることに注目しています。2年債利回りには、今後の金融政策に対する市場の見方などが反映されます。ガンドラック氏の基本的な考え方は「FFレートが2年債利回りに追随する」です。ガンドラック氏は、次回のFOMCでケビン・ウォーシュ議長が利上げを行うかについて、完全には確信していないようです。利上げを見送ったとしても驚かないとする一方、その場合には長期金利が大きく上昇する可能性があると指摘しています。

②2%の物価目標とFRBの信認
次に、インフレとFRBの信認です。
ガンドラック氏は、ウォーシュ議長が以前のカンファレンスで2%の物価目標へのコミットメントを示した一方、PCEインフレ率が依然として高止まりしていることを指摘しています。ここで問題になるのは、2%という数字そのものだけではないと思います。中央銀行が「物価上昇率を2%に戻す」と表明しても、市場参加者がそれを信用しなければ、インフレ期待を抑えることが難しくなります。反対に、市場が「FRBは必要であれば景気に一定の痛みが生じてもインフレを抑制する」と考えていれば、インフレ期待を抑えることができます。ガンドラック氏は直接的な表現はしていませんでしたが、ウォーシュ議長の信認に注目しているようでした。

③40兆ドルの政府債務と財政赤字
最後に、米国の財政です。
ガンドラック氏は、米国の政府債務が現在約40兆ドルに達しており、2032年までに50兆ドルに達する可能性を指摘しています。さらに、社会保障についても、現在の資金調達と給付の仕組みが続けば2032年頃には十分な給付を維持できなくなり、制度改革を行わない場合には給付を大幅に削減する必要があると述べています。また、財政赤字が今後さらに拡大し、10年以内にはGDP比7~8%程度に達する可能性についても指摘しています。

2.上記について思うこと

国債は、金融と政治の交錯点であり、現在の米国でも、金融政策と財政政策という下記2つの論理が国債金利をめぐってせめぎあっていると感じました。

・金融政策→インフレとFRBへの信認→将来の金利・インフレに対する市場の見方
・財政赤字→政府債務の増加→国債の供給増加

以前、『人口大逆転』の著者であるマノジ・プラダン氏が新著『The Unanchored Central Banker』の出版後に、元ヘッジファンドマネージャーのパトリック・ボイル氏によるインタビュー動画で、「高齢化が進んだ先進国では、社会保障費による財政拡大が中央銀行の独立性を脅かすようになるだろう」という趣旨の発言をしていました。私もその主張が現実のものとなるように思うのですが、財政上の制約が強まる中でも、ウォーシュ議長が物価安定を優先した金融政策を貫くのか、9月FOMCで確認したいと思います。

ABOUT ME
ダブルデッカー
ファイナンス修士/FP。自分自身の学びを深める場として運営している趣味のサイトです。勉強会で発表するイメージで、広く金融や経済を考える記事を発信しています。本業は、リタイアメントプランニングを専門とするFPです。なお、「FP事務所サイト」では、50代からの金融リテラシーに特化した記事も発信しています。