ここでは、J-REITについて、そもそもの金融商品としての性質やその仕組みを整理してみました。私の意見は、「J-REITは不動産賃貸専業会社の株式。その理由は運営スキームの構造における投資家の持分の位置づけにある。そのため、関連指標も株式をベースに考えるとわかりやすい」ということになります。
以下では、J-REITとは何か、運営スキーム、投資口価格と主な関連指標の順で説明していますが、J-REITとは何かだけ読んでも、一番重要な点はわかるようになっています。その次の運営スキームまでが本論で、それ以降は余力があれば読む参考部分という位置づけです。

1.J-REITとは

REITはReal Estate Investment Trustの略で、文字通り読むと不動産投資信託です。日本のREITについては、Japanの”J”をつけてJ-REITと呼ばれています。(商品性に特別な違いがあるわけではありません。)

REITという商品のコンセプトを一言でいうと、「少額の資金で大規模物件への不動産投資を可能にする」ということになると思います。現物不動産への投資の場合、大きな資金が必要になります。特に大規模物件については、個人で投資を行うことは難しいと思います。しかしながら、REITであれば、少額から大規模な優良物件に投資を行うことができます。極端な話をすると、REITを購入することで、50万円未満の金額で六本木ヒルズへ投資することも可能になります。

世界初のREITは1960年にアメリカで誕生しており、日本では2001年に日本ビルファンド投資法人とジャパンリアルエステイト投資法人の2銘柄のJ-REITが初めて東京証券取引所に上場されました。両者ともにオフィスビルに特化して投資するもので、前者が三井不動産系で、後者が三菱地所系になります。

①J-REIT市場創設の背景
当時の日本においてJ-REITが導入された背景には、「1990年代以降の平成バブルの崩壊」があります。バブル崩壊後の地価下落で低迷していた不動産市場への資金流入を促す対策の一つがJ-REIT市場の創設でした。なお、J-REITに関する制度は、アメリカ等を参考にしてつくられているのですが、「高い配当を出せるように税制優遇措置が講じられている」点に特徴があります。(上場している商品ですので、適時適切な情報開示が課されていることは言うまでもありません。)

その後、(日本ではリーマンショックと呼ばれている)世界金融危機の影響により、2008年にニューシティ・レジデンス投資法人が経営破綻することはありましたが、市況の回復とともにJ-REITも拡大基調に戻っています。現在では、住宅、商業施設、物流施設、ホテル等様々な種類の物件にその投資対象は広がっています。

②J-REITの本質
J-REITの本質は「不動産賃貸専業会社の株式」で、その特徴としては「利益の90%以上を配当還元することで法人税が実質的に免除される」点が挙げられます。不動産投資信託という名前になってはいますが、その仕組みは、株式投資信託ではなく不動産会社の個別株式とよく似ています。(今の時点ではピンとこないかもしれませんが、後ででてくる運営スキームを理解すると、しっくりくると思います。)

不動産賃貸業に徹しているため、複数種類の事業を行う不動産会社の個別株に比べて業績が予測しやすく、ミドルリスク・ミドルリターンと言われています。一般的に、インフレ時には不動産の価格や賃料は上昇する傾向にありますので、J-REITはインフレ対策として有効な資産になり得ます。さらに、上場されている証券なので、(当然のことですが、)現物不動産に比べて売買の手間が圧倒的にかからないこともメリットになります。

ただし、ミドルリスク・ミドルリターンと言われているものの、「その本質は”特殊な株式”」です。株式相場が下落する場合には、(多少の時間差はありますが、)J-REITも下落します。ミドルという言葉の通りに、債券と株式の中間というイメージを持つのは少し楽観的な印象があります。「J-REITへの投資は、あくまでも”特殊な株式”への投資である」と捉えることで、適切なリスク管理ができるのではないかと思います。

2.運営スキーム

J-REITの運営スキームを理解する上で最も重要なことは、「投資法人が主役である」というポイントをしっかりおさえることだと思います。J-REITのしくみの中心には投資法人という会社があり、この周りに関係者がいるイメージになります。

J-REITが行う不動産取引はこの投資法人を通じて行われます。投資家はこの投資法人のいわば株主になることで、投資の果実を得ることができるわけです。また、投資法人は自ら業務を行うことはなく、外部へ委託して、各関係者に業務を行ってもらいます。
(投資法人の仕組みや関係者の役割は「投資信託及び投資法人に関する法律」によって定められています。なお、投資信託は会社型と契約型の2種類あるのですが、J-REITは前者になります。後者はいわゆるオルカンのようなファンドをイメージするとわかりやすいと思います。)

① 投資法人の仕組み
投資法人は、株式会社とよく似ています。株式会社の場合、株式を保有している株主が配当金を受け取ります。投資法人の場合、投資口を保有している投資主が分配金を受け取ります。株式は株式市場で売買され、投資口はREIT市場で売買されます。

一方で、投資法人には、株式会社とは異なる下記2つの特徴があります。
・(投資のための器として機能するだけで、)自らは業務を行わない。
・利益の90%以上を分配金として支払うことで、法人税が実質的に免除される。

投資法人は、投資主が拠出した資金の他に、銀行借り入れ等も行い、不動産を取得。テナントからの賃料収入を得て、投資主に分配金を支払います。

② 投資法人の周りにいる関係者
投資法人は自ら業務を行うことなく、外部へ業務を委託するのですが、その委託先は、資産運用会社/資産保管会社/一般事務受託者の3つです。この中で最も重要な役割を果たすのが、資産運用会社です。

(1) 資産運用会社:資産運用会社は、投資法人の活動をコントロールする頭脳の役割を担っています。また、資産運用会社はスポンサーと呼ばれる会社によって設立されています。スポンサーは資産運用会社に出資しているだけでなく、人材の拠出もしています。さらに物件の提供等各種サポートも行う、J-REITの運営に大きな影響力を持つ重要な存在です。前回の記事で名前がでた、日本ビルファンド投資法人を例に挙げると、資産運用会社は日本ビルファンドマネジメントで、スポンサーは三井不動産になります。
なお、投資した不動産の建物やテナントを管理する役割を担う不動産運営管理会社は、資産運用会社の委託に基づいて業務を行うイメージになります。

(2) 資産保管会社:投資法人の資産に関する重要な書類を保管します。信託銀行がその役割を担っています。

(3) 一般事務受託者:投資法人の資産の運用や保管以外の業務を行います。会計・税務の事務であれば会計税務事務所等が、投資法人の投資主総会等の運営の事務であれば信託銀行がその役割を担っています。

3.投資口価格と主な関連指標

商品としての成り立ちからして当然のことですが、価格や関連指標の考え方も株式とよく似ています。

①投資口価格
株式の価格が市場で売買される株価であるように、J-REITの価格は市場で売買される投資口の価格になります。これを投資口価格と言います。当然のことですが、投資口価格は、市場における需要と供給で決まることになります。

②分配金利回り
金融商品としてのJ-REITの特徴は、高い分配金利回りが期待できることであるため、非常に重要な指標となります。
「分配金利回り=1口あたり分配金額÷投資口価格」で求められます。
投資判断にあたっては、「過去の分配金や予想分配金をもとにどの程度の利回りを期待するか」、「投資口価格や分配金の変動等のリスクをどの程度想定するか」等の検討が必要になってきます。J-REITの商品性を踏まえた上で、事前にリスクを考慮しておくことは大事です。

③FFO倍率
FFO倍率は、投資口価格がJ-REITの”収益力”に対して割安か割高かを判断する指標です。
「FFO倍率=投資口価格÷年換算した1口あたりFFO」で求められます。
FFOは、Funds From Operationの略で、(ざっくり言うと、)J-REITが賃料収入として稼ぐキャッシュフローの金額です。このFFOを発行済投資口数で割った金額が“1口あたりFFO”になります。(実際には、多くのJ-REITの決算期間は半年のため、年換算のための計算がさらに加わることになります。)
すなわち、FFO倍率は、「1年間に賃料収入として稼ぐ現金の何倍の価格で、J-REITが売買されているか」を表しています。一般的に、FFO倍率が小さいほど割安とされています。

④NAV倍率
NAV倍率は、投資口価格がJ-REITの”資産価値”に対して割安か割高かを判断する指標です。
「NAV倍率=投資口価格÷1口あたりNAV」で求められます。
NAVは、Net Asset Valueの略で、(ざっくり言うと、)J-REITの保有不動産の時価評価額から借金を引いた金額です。このNAVを発行済投資口数で割った金額が“1口あたりNAV”になります。
すなわち、NAV倍率は、「保有している純資産の時価の何倍の価格で、J-REITが売買されているか」を表しています。一般的に、NAV倍率が1を下回ると割安とされています。

⑤LTV
(②~④が投資口価格の評価指標であったのとは異なり、)LTVは、J-REITの財務の健全性を判断する指標です。
「LTV=有利子負債÷総資産」で求められます。
LTVは、Loan To Valueの略で、「J-REITが不動産投資を行うにあたって、資金の何%を借入金でまかなったか」を表しています。
LTVが高いほどハイリスクハイリターンと言えますが、低ければ低いでリターンも下がることになるため、一概にどちらがよいとは言えない点には留意が必要だと思います。

※ご参考:取引費用
J-REITについて投資家が負担する費用は、株式と同様に証券会社に支払う購入手数料と売却手数料の2つで、それぞれ購入時、売却時にかかります。(もちろん投資法人は外部へ業務を委託するので、その対価として委託報酬を支払っていますが、J-REITの市場価格は、それらも反映されたものになります。)

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