インデックス投資:3つの基本論点
ここでは、オルカンや全米株式などのインデックス投資に関する基本的な論点についてまとめてみました。全体の構成は下記の通りです。
1.リスク管理
2.積立投資
3.全世界株式か?全米株式か?
【ご参考】インデックス投資について学べる名著
全体でかなりの分量になっていますが、各論点はそれぞれで完結していますので、一部だけお読みいただくこともできます。また、下記はあくまでインデックス投資について限定しているお話になります。当然のことではありますが、インデックス投資と個別株投資は別物として分けて考えていただければ、と思います。
1.リスク管理
まず、投資において行うべきリスク管理についてお話ししたいと思います。よく「投資にリスクはつきものである」とか「投資にあたってはリスクを考える必要がある」といった言葉を聞かれると思います。以下では、そうしたリスクを管理するための考え方を説明しています。
私は、投資をする際のリスク管理で重要なポイントは下記3点ではないかと考えています。
①投資は余剰資金で行う
②理解した上でリスクをとる
③予想される最大損失額を自分が許容できる範囲に収める
①投資は余剰資金で行う
当たり前ではないかと思われるかもしれませんが、余剰資金で投資を行うことがリスク管理の出発点だと思います。生活資金と投資資金がしっかり分かれていることで初めてリスクをとることが可能になると思います。損失が発生した場合に現在の生活へ直ちに影響が及ばないようにするだけでなく、損失を回避することにもつながると思います。例えば、余剰資金であれば、株式市場が暴落しインデックスファンドの下落が起こった場合でも、株価が戻るのを待つという対応がとれます。すなわち、時間的な余裕がある期限が切られていないお金だからこそリスクを吸収することが可能になると思います。
②理解した上でリスクをとる
これも当然のお話ではありますが、どういうシナリオが実現すれば利益が得られて、どういうシナリオが実現すれば損失が発生するかを自分なりに理解することが重要だと思います。そもそもどういう場合に損失が発生するのかがわからなければ、リスクをとるという意思決定自体ができません。また、自分なりに調べて納得した見通しを持っていなければ、継続的にリスクをとることが難しくなり、利益が実現するまで待てずに投資をやめてしまうことにもつながりかねないと思います。インデックスファンドのようなものであっても、どういう理屈で株価が上下するのかはおさえておく必要があると思います。
③予想される最大損失額を自分が許容できる範囲に収める
投資の本質は、利益を得るために損失の可能性を受け入れることだと思いますが、大きな利益には大きな損失の可能性がつきものになります。そのため、この損失の最大値を自分が受け入れることができる範囲にとどめておくことが大切になると思います。すなわち、自分が許容できる損失の限度額を把握した上で、予想される最大損失額をその範囲に収めることによって、投資の不確実性に対応していくという考え方です。
上記の余剰資金、リスク自体の理解、リスク許容度はいずれも基本的かつ重要なポイントであり、投資の不確実性に対処していく上で非常に有益ではないかと思います。
2.積立投資
次に、インデックスを選ぶ前提となる積立投資の基本にあたる部分についてお話をしたいと思います。 具体的には、「そもそも積立投資とはどういう考え方に基づいているのか?」、「(そうした考え方を踏まえた上で)追加でおさえた方がよいポイント」、及び「インデックスファンドが選ばれる理由」の3点になります。
2-1.基本的な考え方
積立投資の基本的な考え方を一言でいうと、「長期間で購入口数を増やして、出口で売却益をとる」ということだと思います。
ある投資信託を売買する場合、売却益は次の通りになると思います。
売却益=(売却平均単価-購入平均単価)×保有口数-諸費用(税含む)・・・【※】
例えば、10年間毎月1万円ずつ積立投資をして10年後に売却するケースで考えてみると、その根っこにある考え方は、「この投資対象は、(アップダウンはあるかもしれないが、)10年間の長期で見ると価格が上がっていくと思う。だから、投資したら儲かるだろう。ただ、現時点では、まとまったお金が手元にないので、今後の収入の中から一定額ずつ積立てていこう」ということだと思います。
ここで大事なことが2つあると思います。
①長期で上がるものに投資する
まず、一番大事なことは、「その投資対象は、本当に“長期で価格が上がっていく”のか?」ということだと思います。ここが崩れてしまうと、そもそも積立投資が成り立たなくなってしまいます。
さらに、「そのことについて、自分自身が納得してそう思える」という点も大事だと思います。積立投資では長期間保有しますので、自分自身で確信が持てないものだと、精神衛生上も良くない期間が発生する可能性が高く、場合によっては続けることが困難になりかねないと思います。また、すべての投資に言えることですが、結果はすべて自分に返ってきますので、自分で判断することが大切だと思います。
②出口に気をつける
次に大事なことは、「出口に気を付ける」ということだと思います。例えば、株式インデックスに連動する投資信託を購入した場合でも、大きな暴落は10年に一度くらいで起きていると思います。リスク資産に対して積立投資をされる場合には、出口(=売却)の際に不利益を被らないように気を付ける。そのために、投資対象の値動きについて大きな流れは把握しておく必要があると思います。
2-2.追加でおさえた方がよいポイント
さらに、追加でおさえた方がよいポイントが3つあると思います。
①投資対象について
投資対象は、リスク分散の効いたものを選んだ方がよいと思います。「卵は1つの籠に盛るな」という投資格言は有効です。長期で投資するということはリスクにさらされる時間もそれだけ長くなるので、尚更です。
また、低コストであることは重要です。購入手数料等コストは、売却益に直結します。長期間保有することに加えて、購入回数も多くなりますので、手数料にはこだわる必要があると思います。(計算式【※】の「諸費用(税含む)」の部分に該当。)
②税制優遇について
税金も重要な要素です。売却益には税金がかかります。iDeCoやNISAなどの税制優遇を使うことで、事実上の更なるコストダウンが可能になります。(計算式【※】の「諸費用(税含む)」の部分に該当。)
③一括投資との使い分けについて
ただし、積立投資が一括投資にくらべて有利な投資手法というわけではなく、それぞれの特性にあった使い分けをする必要がある点については留意が必要です。既にまとまった資金を持っている場合には一括投資も考える必要があります。例えば、「120万円を10年間一括投資した場合」と「毎月1万円ずつ10年間積立投資した場合」のパフォーマンスについて考えると、直感的に理解できるのではないかと思います。
2-3.インデックスファンドが選ばれる理由
ここまでの話でもうお分かりだと思いますが、株価指数に連動するインデックスファンドは下記の条件を満たしているものも多く、それが積立投資の対象に選ばれる理由になっています。
・長期で価格が上がっていくことが期待できる。
・リスク分散が効いている。
・低コストである。(さらに、iDeCoやNISAなどの税制優遇が受けられるものも多い。)
ただし、どの株価指数に連動するものを選ぶかについては、慎重に考える必要があると思います。
3.全世界株式か?全米株式か?
インデックス投資の最大の論点は、「どのインデックスに連動するものを選ぶか?」ということだと思います。
ここでは、まずインデックス投資の背景にある考え方を確認した上で、主要なテーマといえる「全世界株式か?全米株式か?」について考えたいと思います。
3-1.背景にある考え方
インデックス投資の背景にある考え方を一言でいうと、「市場全体をまるごと長期で保有することで、市場平均のリターンを獲得し続けよう」ということになると思います。
さらに言うと、「機関投資家といったプロと同じ土俵にあがって、銘柄や売買タイミングを適切に選択し、市場平均以上のパフォーマンスを出す」という”できないこと”はせずに、「市場全体をまるごと長期保有して、継続的に市場平均のリターンを得る」という”できること”を通じて資産形成を行うことが、その意図するところになります。ここからもわかる様に、インデックス投資を行う上で長期保有は非常に重要な要件になります。
ただ、この”できること”というのが簡単そうで案外難しかったりします。長期保有をしているとその間に暴落も経験したりしますので、自分でいろいろ考えてみて納得した上で選ぶというプロセスを経ておくことが欠かせないと思います。
そのような観点から、インデックスファンドの選択については、(当たり前のお話ですが、)「自分の考えにあったものを選ぶ」ということがとても大事だと思います。
3-2.全世界株式か?全米株式か?
「全世界株式か?全米株式か?」の選択ですが、これについては「デフォルトは全世界株式。必要に応じて、そこからカスタマイズする」という検討の仕方が良いのではないかと思います。
その理由は、「まず最初に最も広くリスク分散が効いた状態を考えて、その後で特定地域に集中投資をしてリスクをとるかどうかを考える」のが、話を整理しやすいと思うからです。例えば、「歴史を振り返ると、覇権国はオランダ→イギリス→アメリカのように移り変わっており、特定の国が永遠に繁栄し続けることはないので、集中投資はしない」と考えるなら、全世界株式のままということになります。それに対して、「アメリカ企業の繁栄は少なくとも10~20年間は続くと考えられるから、当面はリスクをとって最もパフォーマンスがあがるであろうアメリカに集中投資をしよう」と考えるなら、全米株式に変更するということになります。
繰り返しになりますが、基準は全世界株式に置いて、確信を持てる場合のみ全米株式に集中投資というのが無理のないスタンスではないかと思います。ただ、いずれの場合であっても、「自分で考えてしっくりくる方を選ぶ」ということが大切だと思いますし、そうすることで長期保有が可能になり、その結果市場平均のリターンを長い期間にわたって享受できるのではないかと思います。
【ご参考】インデックス投資について学べる名著
ご参考として、インデックス投資の基本的な考え方を学べる本を3冊紹介したいと思います。
①「敗者のゲーム」チャールズ・エリス著
まず、1冊目は、チャールズ・エリスの「敗者のゲーム」です。チャールズ・エリスは、金融機関向けのコンサルティング会社を経営していた著名な資産運用コンサルタントです。
チャールズ・エリスのメッセージを一言でいうと、「市場に勝つという敗者のゲームには参加せずに、市場を忠実に反映するインデックスファンドに投資し、長期運用を続けることで、個人投資家は本当の勝者のゲームができる」ということになると思います。
人生設計の中で資産を運用するという大きな文脈を踏まえた上で、「個人投資家にとってインデックスファンドがなぜ望ましいか?」について、プロが多数を占める市場の現実にふれながら平易な説明がされています。資産運用にあたって必要な心構えや基本的な考え方がバランスよく示されており、非常にわかりやすいと思います。もしおすすめを一冊に絞る必要があるなら、迷わずこの本をすすめます。
②「インデックス投資は勝者のゲーム」ジョン・C・ボーグル著
2冊目は、ジョン・ボーグルの「インデックス投資は勝者のゲーム」です。ジョン・ボーグルは、世界初の個人投資家向けのインデックスファンドを設立した“インデックスファンドの父”です。
ジョン・ボーグルのメッセージも、チャールズ・エリスとほぼ同じで、「個人投資家が株式投資で成功する最良の方法は、インデックスファンドを購入して永遠に持ち続けること」ということになります。(ここでは、著者の主張の趣旨を極力正確に記載すべく“永遠”という表現をつかっていますが、“長期”という言葉に読み替えて考えるのがよいと思います。)
インデックス投資が「長期的には株式のリターンは企業がもたらす投資リターンに見合ったものになる」という常識の上に立脚していること。及び「インデックスファンドのリターンの源泉は、幅広い分散と最低限のコスト」であること等の商品設計上のコンセプトが語られています。
この中で”長期的”という言葉が非常に重要だと思います。短期的には市場の混乱によって株価が大きく変動することがあっても、長期的には企業が生み出す投資リターンが株式リターンの重要な源泉になる、という考え方が、一喜一憂しない根拠になると思うからです。
なお、“永遠”という表現からもうかがえる様に、ジョン・ボーグルにはアメリカ企業は成長し続けるという信念があり、それがこの本の大前提になっています。また、多少表現が強かったりする部分はありますが、それは成長の果実を個人投資家に届けようとする情熱のあらわれなのだろうと思います。いずれにせよ、インデックスファンドの生みの親であるジョン・ボーグルの言葉は、傾聴に値すると思います。
③「ウォール街のランダム・ウォーカー」バートン・マルキール著
上記2冊を読まれた上で、さらに学びたいという場合には、バートン・マルキールの「ウォール街のランダム・ウォーカー」がよいと思います。バートン・マルキールは、50年ほど前からインデックスファンドの必要性を説いていた著名な経済学者です。
バートン・マルキールのメッセージも前の2人と同様で「個人投資家は、アクティブファンドよりインデックスファンドを買ってじっと持っている方がはるかに良い結果を生む」というものになります。
本書が前の2冊と異なるのは、マーケットの歴史やファイナンス理論も交えた、より詳細な議論がされている点になります。インデックス投資の理論的支柱という位置づけの本だと思います。上記2冊に比べて分量が多いので読むのに時間はかかりますが、その分インデックス投資への理解が深まると思います。
※上記3冊を読む上で留意すべき点
ただし、上記3冊ともに「アメリカ人を読者として想定している」という点には注意が必要だと思います。ですので、「米国株には当てはまるだろうが、その他について当てはまるかは別途確認が必要だろう」というスタンスで読んだ方がよいのではないかと思います。
また、当然のことではありますが、アメリカ人が全米株式インデックスファンドを保有している場合は、市場リスクのみをとっていることになりますが、日本人が全米株式インデックスファンドを円で購入して保有する場合には、市場リスクに加えて為替リスクもとっていることを認識しておく必要があると思います。