”米国ETFの基本的なしくみ①”に続いて、米国ETFの費用や価格について説明したいと思います。
(なお、以下では、米国で上場されている現物拠出型の株価指数連動のETFを想定して説明しています。)
3.個人投資家が負担する費用
ETFについて個人投資家が負担する費用は下記の3つで、それぞれ購入時、保有時。売却時にかかります。
①購入手数料:購入の際に証券会社に支払う手数料になります。(為替手数料がかかることを含め通常の米国株の購入と同じ手数料体系が適用されます。)
②運用管理費用(信託報酬):保有期間中に、運用会社とカストディアンに支払う手数料になります。それぞれの行う役務に対して支払う趣旨のお金です。
③売却手数料:売却の際に証券会社に支払う手数料になります。(為替手数料がかかることを含め通常の米国株の売却と同じ手数料体系が適用されます。)
ETFの優れた点として、運用管理費用が低いことをあげられますが、これは販売会社がいないことに加えて、“ETFの基本的な仕組み①“で説明していた発行市場のしくみが効いています。発行市場での現物株式の取得・引き渡しのしくみによって、マーケットから売買コストをかけて調達するよりも低コストで(運用会社が)対象資産の取得や放出ができるためです。ただし、(運用管理費用が低いとはいえ、)ETFは売買するたびに、証券会社に手数料を払うことになりますので、積立投資には向かない商品であることには注意が必要だと思います。
4.基準価額と市場価格
最後に、ETFの価格について説明したいと思います。
① 基準価額
基準価額については、非上場の投資信託と同じです。ETFでもの純資産総額を受益権総口数で割ったもので、マーケットが終了後に、終値をベースに1日に1回だけ計算されます。投資信託の価値を正確に反映している価格は、基準価額であるということに変わりはありません。
② 市場価格
市場の売買価格により決まる価格で、取引所で売買されるごとにリアルタイムで決まります。基準価額と市場価格は別個に存在しているものですが、マーケットにおいて乖離を解消する力が働きます。両者のずれを利用して儲ける取引が行われるため、”安い方を買って高い方を売る取引”が行われるなかで、両者の価格は近づいていくようになっています。
③ 基準価額と市場価格の乖離が解消されていく理由
「基準価額はマーケット終了後に1日に1回だけ計算されるのに、どうやって基準価格と市場価格のずれをつかむのか?」という疑問がわくと思います。答えは、基準価額のリアルタイム推定理論値を計算し、それをもとに市場価格との乖離を把握しているというものになります。
両者の乖離をもとに儲ける”安い方を買って高い方を売る取引”は、下記の[A]/[B]の通りになります。文字で書くとややこしそうに見えると思いますが、もとになっている考え方は「同じものについて、発行市場と流通市場で別々の価格がついているなら、安い市場で買って高い市場で売れば差額が儲かる」という至極簡単な理屈です。
[A]”市場価格(流通市場)>理論価格(発行市場)”の場合
(1) 流通市場で“指数構成銘柄群の現物株式”を購入する。
(2) 発行市場で“指数構成銘柄群の現物株式”と引き換えにETFの受益証券を発行してもらう。
(3) 流通市場でETFを売却して儲けを得る。
(1)/(2)が”安い方を買う取引”に相当し、(3)が”高い方を売る取引”に相当します。価格は需要と供給できまりますので、売却(=供給)が増えれば市場価格には下落圧力がかかることになります。
[B]”市場価格(流通市場)<理論価格(発行市場)”の場合
(1) 流通市場でETFを購入する。
(2) 発行市場でETFの受益証券と引き換えに“指数構成銘柄群の現物株式”を引き渡してもらう。
(3) 流通市場で“指数構成銘柄群の現物株式”を売却して儲けを得る。
(1)が”安い方を買う取引”に相当し、(2)/ (3)が”高い方を売る取引”に相当します。価格は需要と供給できまりますので、流通市場で購入(=需要)が増えれば市場価格には上昇圧力がかかることになります。