A2.インデックス投資

米国ETFの基本的なしくみ①

ネット証券からでているS&P500や全米株式を対象とする円建ての投信信託は、(VOOやVTIなどの)米国上場のETFに投資をする運用形態になっていると思います。

ここでは、もう一歩踏み込んで、米国ETFとはそもそもどのような金融商品なのかについてその仕組みをお話ししたいと思います。
多少長くなりますので、2回に分けた上で、1回目で運営スキームについて、2回目でETFの費用や価格について説明したいと思います。
(なお、以下では、米国で上場されている現物拠出型の株価指数連動のETFを想定して説明しています。)

1.ETFとは

ETFはExchanged Traded Fundsの略で、文字通り読むと取引所で取引されるファンドで、日本語では上場投資信託と言われています。ETFという商品のコンセプトを一言でいうと、「投資信託を上場されている株と同じように取引所で売買する」ということになると思います。一般の投資信託と異なり、価格がリアルタイムでわかった上で売買できる点(=透明性)が優れた点であり、それによって投資信託を株式のように売買することが可能になります。

世界初のETFは、1990年にカナダで生まれたもので、株価指数に連動するETFです。その後、1993年にアメリカ初のETFとして、S&P500に連動するSPYが誕生し、1999年にはNASDAQ100に連動するQQQが上場されています。日本初のETFについては、1995年に日経株価指数300(日経225とは別物です)に連動するETFが上場されています。

なお、バンガードのVTI(米国の株式市場をカバーする指数に連動)/ VT(世界の株式市場をカバーする指数に連動)/ VOO(S&P500に連動)は、それぞれ2001年/2008年/2010年に設定されています。

2.運営スキーム

ETFの運営は、発行市場と流通市場で成り立っています。発行市場は運用会社が受益証券(=投資信託保有者の権利を表す証券)を発行する市場で、流通市場はその発行された後の受益証券を売買する市場です。非上場の投資信託の場合には発行市場しか存在しませんが、ETFは取引所で売買できるため流通市場も存在しています。発行市場では大口取引しかできませんが、流通市場では小口取引が可能になっています。個人投資家は流通市場に参加することになります。

① 根底にある発想
ETFの運営スキームの根っこにある発想は、「“指数構成銘柄群の現物株式”と引き換えにETFの受益証券を発行すれば、その受益証券を売買することで“指数構成銘柄群の現物株式”をまとめて売買するのと実質的に同じことができる」というものだと思います。

そして、それを実現する仕掛けとして、「 “指数構成銘柄群の現物株式”とETFを物々交換する場」(=発行市場)と「ETFをお金で売買する場」(=流通市場)を別々に分けて設けています。この2つの市場がうまくかみ合うことで、実質的に“指数構成銘柄群の現物株式”をお金で売買できる様になっています。

② 発行市場
発行市場では、“指数構成銘柄群の現物株式”と引き換えにETFの受益証券を発行したり、それとは逆にETFの受益証券と引き換えに“指数構成銘柄群の現物株式”が引き渡されたりします。運用会社と大口投資家の取引を指定参加者たる証券会社が仲介する構図になっています。また、現物の保管についてはカストディアンたる銀行が担うことになります。

(1)運用会社:ETFの受益証券を発行します。投資信託会社が役割を担っています。
(2)指定参加者:運用会社と契約していて、大口の投資家との取引を仲介します。大手証券会社が役割を担っています。
(3)大口投資家:株式のバスケットを現物拠出する大口の投資家です。機関投資家が役割を担っています。
(4)カストディアン:運用会社に代わって有価証券の保管・管理などの業務を行う金融機関です。銀行が役割を担っています。

③ 流通市場
流通市場は、株式の売買とほぼ同じイメージになります。取引所に上場されたETFを売買する投資家どうしを証券会社が仲介する構図になります。なお、留意すべき点として、流動性供給業者の存在があります。流動性供給業者は、売り注文や買い注文を提示し、他の投資家の取引が円滑にいくようにしています。(流動性供給業者が提示する“売りたい価格”や“買いたい価格”は、投資家の売買の目安になります。)

(1)取引所:ETFを上場する取引所になります。
(2)証券会社:投資家間のETFの売買を仲介します。
(3)投資家: ETFの売り手と買い手になります。個人投資家はここに位置づけられます。
(4)流動性供給業者:投資家に円滑な取引環境を提供するため、売買の注文を提示する業者になります。

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FPです(ファイナンス修士/CFP認定者/FP1級技能士/宅建士)。 資産運用の観点から金融リテラシー向上に役立つ発信ができれば、と思っています。