日本銀行のマイナス金利解除以降「金利のある世界」という言葉を聞くことが多くなったと思います。円安とも関わりの深い話なので、前回の記事の続きで思うところを書いてみました。
1.金利のある世界(私の仮説)
私は、「金利のある世界」=「名目金利はゼロより大きいものの実質金利はマイナスの世界」と理解しています。「日本銀行の利上げの終着点は物価上昇率を上回る金利にはならず、他国対比で金利が上げられない状態が今後も継続的に続く」というのが私の基本的な仮説です。
そう考えるに至った理由は、やはり政府債務です。利上げが難しい理由については、政府債務(国債の利払い費増)、日銀当座預金の利払い負担増と日銀の債務超過、中小企業の利息負担増、変動金利が多い住宅ローン等の複数の論点がありますが、その中でも政府債務が今後を考える上でもっとも有力な手掛かりになると思います。「財政の持続可能性は、どのようにして確保されていくのか?」この問いを考えることで、ある程度今後を見通せるのではないかと思います。
2.インフレ課税と円安リスク
私は、インフレ課税によって家計から政府に富の移転が行われ財政の持続可能性が確保されていくのが基本シナリオだと考えています。(ハイパーインフレで国の借金をチャラにするようなことは、現実的に極めて可能性が低いと思います。)ポイントは、税のみによってそれがなされるのではなく、金融政策がそこで大きな役割を果たすという点です。すなわち、名目金利を物価上昇率以下に据え置く金融政策がとられることで、政府債務を実質的に減らしていく可能性が高いのではないかと考えています。
さらに言うならば、実質金利がマイナスである以上、他国が相対的に高い金利を設定しているかぎり円安圧力を受け続けることになります。そのため、家計の立場においては、インフレによって購買力を失わないように投資を行うことに加え、円安リスクに備えた通貨分散にも配慮しておくことが必要だと思います。
3.リスク管理の重要性
もちろん「賃金と物価の好循環によって経済が成長し、物価上昇を上回る金利がつくようになるはずだから、そのような話は杞憂だ」、「独立性を有した通貨の番人たる日本銀行が通貨価値を毀損し続けるような金融政策をとるはずがない」等のご意見はあると思いますし、私の仮説が間違っている可能性も十分あるかとは思います。
そうしたことを踏まえた上でも、(それが良いことか悪いことかという価値判断とは別に、)「自分はどういう状況に置かれることになりそうか?」「その時困らないように今何をしておくべきか?」という意識をもって家計のリスク管理をしていくことが大切なのではないかと思います。