ここでは常日頃持っている「これから10年間という長期で見た場合に、世界が進んでいく方向はこちらではないか?」という大まかなイメージをお話してみました。(以下は、個人的な印象論としてお読みください。)
1.グローバルサウスの台頭
月並みですが、やはり一番の特徴は、グローバルサウスの台頭(アジア、ラテンアメリカ、アフリカ等の新興国)ではないかと思います。
アジア経済研究所の2023年のレポート(「第1回 グローバルサウスの経済的影響力 ——世界経済の「第三の極」をどうとらえるか」)によると、世界の名目GDP全体に占めるグローバルサウスの割合は、2020年の16.4%から2050年に22.2%に増加。その一方で、G7の割合は2020年の46.3%から2050年に31.7%になると推計されており、両者の経済規模の差が縮小していく見通しが語られています。(なお、同レポートでは、国連の枠組みであるG77をグローバルサウスの集計単位として便宜上使用しています。)
実際に、インドやアセアン諸国等の経済発展はご存知のところだと思います。たとえば、身近なところでは、最近日本に東南アジアからの旅行者が増えてきているのも、アセアン諸国の人々が豊かになってきていることの一例ではないかと思います。何か一枚岩のグループにまとまっているわけではありませんが、基本的に米中分断の時代において中立のポジションをとっており、今後10年間継続して米中両陣営から経済的メリットを受けやすい立場にいるのではないかと思います。
(もちろんより詳しく見れば、グローバルサウスとされている中でも、人口ボーナスがこれからも続く国がある一方で、既に高齢化社会に突入している国もあります。また、資源国があれば非資源国もあり、各国の事情も異なっており、経済成長できる国とそうでない国の優劣は当然出てくると思います。)
2.米国が世界をリード
そうした中でも米国が世界経済をリードする状況は変わらないのではないかと思っています。その理由は、以前の記事(「私がインデックス投資に全米株式を選ぶ理由」)でもお話したように、人口や技術等の要素を米国ほど高いレベルで兼ね備えている国はなく、他国対比での米国の優位性は10年後も変わらないと思うからです。例えば、現在米国は先進国の中で突出した規模の生産年齢人口を有していますが、米国国勢調査局(2023年全国人口推計)によると、その生産年齢人口は2050年まで増加する見通しです。また、技術についても、世界有数の教育研究機関が米国に多数あることを踏まえると、ITやバイオ等の先端分野において米国の競争上の地位は10年という期間の中ではあまり変わらない可能性が高いのではないでしょうか。
(もちろんすべてがうまくいっているわけではなく、米国にも、格差の拡大や政治的分断など深刻な問題はあります。)
3.日本の論点
私はいわゆる悲観論者ではないと自分では思っているのですが、日本について考えた場合、やはり高齢化と人口減少の影響は大きいと思います。内閣府が出している「令和6年版高齢社会白書」によると、2023年時点で総人口に占める65歳以上の割合は既に3割弱(29.1%)であり、今後も増加し続ける見通しです。2035年時点で32.3%となり、2070年時点で4割弱(38.7%)と推計されています。また、総人口は2023年時点の1億2435万人から2035年時点で1億1664万人となり、2070年時点で8700万人へとほぼ3割減ると推計されています。
私は、この数字を踏まえた時に、(それが良い悪いということとは別に)これから10年間の”経済成長”、社会保障を勘案した場合の”財政状況”、財政を配慮した”金融政策の見通し”、そうした財政・金融政策を反映した”通貨の展望”など自ずと見てくるものがあるのではないかと思っています。もちろん明るい未来になってほしいと思うのですが、「こうなってほしい」という願望と共に「こうなりそうだ」という現実的な視点を持つこともとても重要だと思っています。
以上はあくまで、私の個人的なイメージなので、その具体的な内容については様々なご指摘が当然あると思いますが、大切なことは、長期の時間軸の中で世界の流れや自分のまわりの環境がどう変わっていくかを絶えず考えることなのではないかと思っています。