私は、インデックス投資について全米株式を選んでいます。その理由は「全米株式への投資には崩れにくい優位性があるため、全世界株式を長期にわたってアウトパフォームするだろう」と考えるからです。最も魅力的だと考える米国に集中投資するというのが私の方針です。(なお、もし全米株式がない場合には、S&P500を選びます。)
1.私が考える全米株式の優位性
私が考える全米株式の優位性は、次の①~③の通りです。
①そもそも米国経済が有望である
下記3点を考えるだけでも、他国対比での米国経済の優位性は明らかだと思います。(いずれかの要素について部分的に優る国はあるかもしれませんが、人口/技術/資源の3つを高いレベルで兼ね備えている国は他にないのではないでしょうか。)
・先進国の中で突出した規模の生産年齢人口:米国国勢調査局(2023年全国人口推計)によると、生産年齢人口は2050年まで増加し、人口全体のピークは2080年になる見通しです。人口全体に占める生産年齢人口の割合は、2022年時点の65%弱(216,055千人/333,288千人)から緩やかに低下していき、2100年時点で57%強(209,761千人/365,558千人)となる見込みです。アメリカにおいても高齢化や人口減少と無縁というわけではありませんが、”突出した規模の生産年齢人口をもつ先進国”という立ち位置は長期的に変わらないのではないでしょうか。
・ITやバイオ等の高度な先端技術:世界トップクラスの教育研究機関があり、世界中から優秀な外国人がアメリカにやってきます。例えば、グーグルやマイクロソフトのCEOはアメリカで教育を受けたインド出身者です。(日本に関係するところでは、地球温暖化研究のパイオニアとしてノーベル物理学賞を受賞した真鍋博士が有名だと思います。)
・豊かな資源:世界1位の原油と天然ガスの生産国であり、銅などの金属でもトップ5の生産国です。(資源とは若干異なりますが、世界有数の農業生産国でもあります。)
②グローバル市場の成長を取り込んでいる企業が多数ある
その上、アメリカにはグローバル展開している企業が多数あります。既存の巨大企業だけでなく、成長企業についても国内市場でうみだした製品やサービスを海外に展開していくパターンがよく見られます。米国企業は、グローバル市場の成長を取り込むことに長けていると思います。
③企業経営において株主の利益が重視されている
加えて、株主還元重視のコーポレートガバナンスが根付いています。(以前のような極端な株主第一主義は修正されていますが、)自社株買いや配当に関する実績からわかるように、アメリカ以上に株主還元を大切にする国はないと思います。さらに言うならば、株主に望ましいコーポレートガバナンスのもと世界の経済成長の果実を得る確かな方法は、全米株式に投資することではないかと考えます。
[補足]全米株式とS&P500の違いについて
厳密に比べると銘柄数が違う等議論の余地はあると思いますが、実際にはどちらを選んでも大きな差はないと思います。私の場合は、「米国市場全体をまるごと買う」という論理的な明快さ優先で全米株式を選んでいますが、これは単純に好みのレベルの話だと思います。
2.私が考える全米株式のリスク
私は、全米株式に投資する際の最大のリスクは、”米国政治”であると考えています。当然ながらアメリカもいいところばかりではなく、”政治の機能不全”は、他の先進国より深刻だと思います。政府機関閉鎖の危機や債務上限引き上げの混乱というレベルにとどまらず、前回の大統領選挙後には、通常の先進国では考えられない議会襲撃事件も起きています。アメリカの政治的な分断は根深いものがあり、今後も長期的な問題として続いていくと考えるのが自然なのではないでしょうか。
2-1.悪化する政治リスク
今年は大統領選挙がありますが、著名な国際政治学者のイアン・ブレマー氏は大統領選挙がアメリカの政治的分裂を悪化させるリスクについて指摘しています。同氏が創設したユーラシア・グループ(地政学リスクを専門に扱うコンサルティング会社)は、毎年世界の10大リスクを発表していますが、2024年の1位は「米国の敵は米国」です。「米国の軍事力と経済力は極めて強力なままだが、米国の政治システムの機能不全は先進工業民主主義国の中で最もひどい……そして今年はそれがさらに悪化するだろう」と予測しています。
2-2.政治リスクに対する私のスタンス
これに対する私のスタンスは、「投資先として魅力的なので、リスクはリスクのまま引き受けつつモニターしていこう」というものです。日々の市況や金融メディアのニュースは確認しているので、そこで問題を把握しながら見通しを探っていくしかないなという考えでいます。
3.インデックスの選択について思うこと
私の場合は、以上のような考えで全米株式を選んでいるですが、他の方にとっても全米株式が正解だとは考えていません。「アメリカは経済的にはたしかに強いかもしれないが、格差から生まれる社会の分断は持続可能とは思えない。だから、自分はリスクを分散して全世界株式を選ぶ」という考え方もあると思います。やはりあくまでも「まず全世界株式ありきで、自分がリスクをとれると考える場合には全米株式(またはS&P500)を選ぶ」というのが無理のない考え方だと思います。そして、(すべての人にとっての)唯一の正解というものがない以上、最終的には「自分がしっくりくる方を選ぶ」というのがよいのではないかと思います。