ここでは、昨今(2023年12月現在)の物価高騰について思うことをお話してみました。
1.賃金と物価の好循環が自分に起きるのか考える
ここ最近、「今が賃金と物価の好循環の正念場」といった論調の報道を新聞やテレビ等のメディアでよく見かけるのですが、「それって本当なんですか?」とその都度思っています。そもそも物価の上昇と賃金の上昇には相関関係はあるのかもしれませんが、因果関係はないと思いますし、(多くの家計にとって)今目の前で起こっているのは物価の上昇に賃金の上昇がついていけない実質賃金の下落なのではないかと思います。さらに言うならば、日本銀行が目標としている「毎年物価以上に賃金が上昇し続けて、人々が2%の物価上昇がごく自然なものと感じられる状態」に社会全体でこの先なっていくと考えるのは相当無理があると思います。例えば、輸出大企業にお勤めの場合に限ればその可能性はあるかもしれないのかなとは思うのですが、「自分の場合はどうなんだろう?」と個々の立場で考えてみるのがとても大切なのではないでしょうか。
2.インフレ課税が中長期で続くリスクに注意する
当たり前のお話かもしれませんが、やはりインフレ課税には注意が必要だと思います。現在日本銀行は物価上昇率に比べて金利を抑える”超々”低金利政策をとっています。その結果、預貯金が物価上昇に負けて価値が徐々に失われる状況になっています。今後日本銀行がマイナス金利を解除したとしても、欧米のように政策金利を連続してあげる対応は考えにくいですし、”超々”低金利政策が”超”低金利政策に移行し、それが継続されると考えるのが妥当なのではないかと思います。主な根拠としては、大きな債務を抱えている財政への配慮があげられますし、その根本原因は少子高齢化に行き着くと思います。
そうしたことを踏まえた上で、インフレ定着を今後のメインシナリオとするならば、物価上昇に比べて金利を低くする政策が中長期で続くと考えるのが自然なのではないでしょうか。(もちろん、「為替が円高方向にふれる等諸々の要因で輸入物価が下落し、国内の物価上昇率がコロナ前に戻っていく」というシナリオもあると思います。だだ、これについては、”国内に戻らない外貨の利子・配当金で黒字が支えられている経常収支の構造”や”脱炭素等による資源高のトレンド”を考えるだけでも、コロナ前の状態が中長期的に継続する可能性は大きくないのではないかという気がします。)
3.為替(ドル/円)について理解を深める
インフレに対する防衛手段として資産運用をこれから本格的に考えるという方も多くいらっしゃると思いますが、その際為替(特に、ドル/円)について自分なりに理解しておくことが重要だと思います。資産運用で相応のリターンを上げることを考えた場合、ドル建て資産への投資が必要になることが多いと思います。為替については株式や債券ほど動きがよめないということはありますが、納得がいく説明をする専門家をフォローしていく等を行いながら、中長期でドル/円はどうなっていくのか自分なりに大きな絵を持っておくことが大事だと思います。相応のリターンを伴う投資機会が国内には限られているという現実がある以上、為替について理解を深めることは避けて通れないのではないでしょうか。