ここでは、昨今(2024年4月現在)の円安について思うことをお話してみました。
1.1ドル160円
ここ最近円安についてのニュースがメディアを騒がせているかと思います。2024年4月26日時点ではニューヨーク外国為替市場の終値で1ドル158円台にのり、160円も目前というところまできています。SNSでも、円の通貨価値下落や日本衰退論が多く語られています。それぞれ内容をみると、過剰反応の部分と真実と言えそうな部分が混在しており、現在の円安について解釈の難しさを表していると思います。以下では、「私はこう理解しています」というところを記載しています。
2.構造的円安と循環的円安
目の前の円安は、構造的円安と循環的円安が重なっており、それが話を分かりにくくしているのではないかと思います。構造的円安の根本原因には実需の問題があり、海外で再投資されて戻ってこない円、地政学的リスクや脱炭素による資源高、拡大しているデジタル赤字などの話がここにつながります。一方で、循環的円安の主因は、言うまでもなく日米の金融政策の相違による日米金利差であり、投機の話がここにつながり、為替介入もこの範疇の話になります。(構造的要因が底流をなすものの、循環的要因がより直接的に為替相場を左右することになります。)
更に、今後の日米金利差の見通しがクリアでないことも大きいです。そもそもアメリカの(経済にほどよい水準とされる)中立金利自体が上昇しているのではないかという議論もあり、アメリカの金利の行方が不透明であることが話をより難しくしています。なお、日本は低金利を前提にした経済・財政運営になっており、(極端な事象が起こらないかぎり)金利上昇幅には限度があるため、アメリカ側の要因で大方決まると考えて差し支えないのではないかと思います。(少し脱線しますが、日銀による追加利上げの可能性がよく話題になっていると思いますが、上昇幅を考えることが大切ですし、さらに言うと、物価上昇率をどれほど上回るのかという実質金利に着目することでコトの本質が見えてくると思います。)
3.今後の見通し(私の仮説)
私自身は、構造的要因は、少子高齢化という日本の人口動態の変化、Gゼロの進展による地政学的リスクの高まりや地球温暖化に配慮した世界的な脱炭素化、日米のデジタル技術格差等の戻らざる流れに裏付けれられたものであり引き続き不変。(もちろんインバウンドを含めた広義の輸出で外貨を稼いだり、企業や工場を国内に誘致する方向はあると思いますが、生産年齢人口が減っていくことを考えるとそれも限界があるとの理解です。)また、循環的要因については、アメリカで大きな景気後退が起こらない限り円高は限定的というイメージでとらえています。
そうしたことを踏まえ、「10年弱程度を1つのサイクルとして循環しながら、今後30年間といった時間軸では変動幅そのものが円安方向にシフトしていく。現在は循環的円安の最終局面に近づいており、米金利の動向次第でピークに到達した後は数年間かけて円高方向にふれていく。だだし、ドル/円の下落は、最大でもピーク時の2割以内の範囲にとどまるのではないか」という仮説をもってドル/円をフォローしています。私は、相場をあてることはそもそも無理という立場なのですが、自分の意見を具体的に持つことで実際の結果とのズレから多くの学びが得られるのではないかと考えています。