インデックス投資を行う場合には、投資信託を使って積立投資を行うことが多いと思います。ここでは、投資信託とは、そもそもどのような金融商品なのかについてその仕組みをお話ししたいと思います。
(なお、以下では、日本で販売されている追加型株式投資信託を想定して説明しています。)
1.投資信託とは
投資信託という商品のコンセプトを一言でいうと、「みんなが出したお金をまとめて、いろんな対象にプロが投資する」ということになると思います。少額から分散投資ができる点が投資信託の優れた点であり、それによって個人でも市場全体をまるごと購入することが可能になります。
世界最初の投資信託は19世紀後半(約150年前)にイギリスで生まれたと一般的には言われており、その目的は、中産階級の投資家が外国の政府証券に分散投資を行える様にすることだったようです。その後、20世紀前半(約100年前)にアメリカ初の投資信託が誕生し、株価の長期的な上昇を原動力に大きな発展を遂げます。日本の投資信託については、1950年代(約70年前)に現在の制度のもとになる法律が施行され始まっています。
2.運営スキーム
投資信託の運営は、下記三者の分業で成り立っています。
①販売会社:投資家に販売する役割(=みんなからお金を受け取る)
②投資信託委託会社:資産を運用する役割(=いろんな対象にプロが投資する)
③信託銀行:資産を保管する役割(=お金や株式等を保管する)
この中の主役は投資信託委託会社で、ここがいわゆる資産運用会社です。投資信託という商品の企画立案、対象の調査から投資の意思決定、投資信託の価格計算等中心的な役割を担っています。これを顧客チャネルとして補佐するのが販売会社で、証券会社等の金融機関が担っています。
また、預かった顧客の資産は、信託銀行が信託法に基づき分別管理を行うことで、三者すべてが破綻しても顧客資産は守られるようになっています。なお、資産を預かっていることから、投資信託委託会社が信託銀行に指図をして、信託銀行が実際の株の売買等の注文をだすという関係になっています。
3.投資家が負担する費用
投資信託について投資家が負担する費用は下記の3つで、それぞれ購入時、保有時。売却時にかかります。いずれも信託財産の金額に一定料率をかけて算出します。
①購入手数料:購入の際に販売会社に支払う手数料になります。実店舗のないネット証券などで購入する場合にはかからないことも多いと思います。
②運用管理費用(信託報酬):保有期間中に、販売会社/投資信託委託会社/信託銀行の3者に支払う手数料になります。3者それぞれの行う役務に対して支払う趣旨のお金です。
③信託財産留保額:売却の際に、換金時のコスト負担を目的に信託財産に残していく必要がある費用になります。信託財産を換金したい人がそれにかかるコストを支払うという趣旨のもので、販売会社や投資信託委託会社等に支払う手数料ではありません。なお、信託財産留保額をとるかどうかは、投資信託ごとに異なります。
いずれの費用も投資家にとって好ましくはないのですが、運用管理費用は保有期間中にずっとかかる費用であり、長期保有にあたり複利コストといえる負の効果を発揮しますので、特に注意する必要があると思います。
4.基準価額と売買価格
最後に、戸惑う場合も多いと思いますので、少し長くなりますが、投資信託の価格にあたる”基準価額”と”売買価格の決まり方”について説明します。
①基準価額
投資信託の価格は、“純資産総額÷受益権総口数×10000“で求められ、いわゆる基準価額(通常1万口あたりの金額)がこれにあたります。基準価額は、マーケットが終了後に、終値をベースに1日に1回だけ計算されます。マーケットが空いている間は、株式等の価格は動きますので、終了後にその日の価格を計算して基準とするという考え方は自然に理解できるのではないかと思います。
②売買価格の決まり方
投資信託の売買価格は、当日の発注後に計算される基準価格が適用されます。すなわち、注文してから値段が確定する仕切りになっています。通常注文締め切時間は、通常当日の15:00に設定されていますので、マーケットが終了して基準価格が計算できるのは必ず注文の後になるようになっています。
例えば、9/13の14:00に投資信託Aを購入する場合、売買価格は“9/12に既に計算した基準価額”ではなく、“9/13にこれから計算する基準価額”になります。
③前日の基準価額を使わない理由
その理由は、前日に計算した基準価額を適用すると、投資家の間の公平性が保てないためです。
もし仮に、9/12の基準価額:1万円(受益権総口数:1万口)の投資信託Aについて、マーケット終了後によい発表があり、翌9/13は保有株式が一日中高値(投資信託Aに換算すると基準価額:3万円に相当)で一定したとします。
そこに、9/13の14:00に”前日の基準価額:1万円”で1万口の新規購入者があり、結果として9/13の基準価額:2万円(受益権総口数:2万口)となった場合、新規購入者は1万円得することになります。しかしながら、この新規購入者がいない場合、9/13の基準価額:3万円(受益権総口数:1万口)となっていたはずであり、既存保有者がわりをくっていることになるわけです。