インデックス投資を行うにあたっては、それを行う理由や背景にある考え方をしっかり理解しておくのは大事だと思います。
特に、資産形成を行う場合、相当な金額を運用することも多いですし、相場環境によっては「本当に続けていていいんだろうか?」等の迷いも出てくると思います。その際に分かれ目になるのが「何をしているかを自分で理解して納得できているか」という点だと思います。
そういう趣旨から、ここでは、インデックス投資の基本的な考え方を学べる本を3冊紹介したいと思います。
1.「敗者のゲーム」チャールズ・エリス著
まず、1冊目は、チャールズ・エリスの「敗者のゲーム」です。チャールズ・エリスは、金融機関向けのコンサルティング会社を経営していた著名な資産運用コンサルタントです。
チャールズ・エリスのメッセージを一言でいうと、「市場に勝つという敗者のゲームには参加せずに、市場を忠実に反映するインデックスファンドに投資し、長期運用を続けることで、個人投資家は本当の勝者のゲームができる」ということになると思います。
人生設計の中で資産を運用するという大きな文脈を踏まえた上で、「個人投資家にとってインデックスファンドがなぜ望ましいか?」について、プロが多数を占める市場の現実にふれながら平易な説明がされています。資産運用にあたって必要な心構えや基本的な考え方がバランスよく示されており、非常にわかりやすいと思います。もしおすすめを一冊に絞る必要があるなら、迷わずこの本をすすめます。
2.「インデックス投資は勝者のゲーム」ジョン・C・ボーグル著
2冊目は、ジョン・ボーグルの「インデックス投資は勝者のゲーム」です。ジョン・ボーグルは、世界初の個人投資家向けのインデックスファンドを設立した“インデックスファンドの父”です。
ジョン・ボーグルのメッセージも、チャールズ・エリスとほぼ同じで、「個人投資家が株式投資で成功する最良の方法は、インデックスファンドを購入して永遠に持ち続けること」ということになります。(ここでは、著者の主張の趣旨を極力正確に記載すべく“永遠”という表現をつかっていますが、“長期”という言葉に読み替えて考えるのがよいと思います。)
インデックス投資が「長期的には株式のリターンは企業がもたらす投資リターンにに見合ったものになる」という常識の上に立脚していること。及び「インデックスファンドのリターンの源泉は、幅広い分散と最低限のコスト」であること等の商品設計上のコンセプトが語られています。
この中で”長期的”という言葉が非常に重要だと思います。「長期保有により平均へ回帰する力が働く」ということが、短期的な混乱で株価が大きく下落することがあっても、一喜一憂しない根拠になると思うからです。
なお、“永遠”という表現からもうかがえる様に、ジョン・ボーグルにはアメリカ企業は成長し続けるという信念があり、それがこの本の大前提になっています。また、多少表現が強かったりする部分はありますが、それは成長の果実を個人投資家に届けようとする情熱のあらわれなのだろうと思います。いずれにせよ、インデックスファンドの生みの親であるジョン・ボーグルの言葉は、傾聴に値すると思います。
3. 上記2冊を読む上で留意すべき点
ただし、上記2冊ともに「アメリカ人に向けて書かれている」という点には注意が必要だと思います。ですので、「米国株には当てはまるだろうが、その他について当てはまるかは別途確認が必要だろう」というスタンスで読んだ方がよいのではないかと思います。
(余談ですが、非常にざっくり言うと、実際にはチャールズ・エリスは全世界株式派で、ジョン・ボーグルは全米株式派です。)
また、当然のことではありますが、アメリカ人が全米株式インデックスファンドを保有している場合は、市場リスクのみをとっていることになりますが、日本人が全米株式インデックスファンドを円で購入して保有する場合には、市場リスクに加えて為替リスクもとっていることを認識しておく必要があると思います。
4.「ウォール街のランダム・ウォーカー」バートン・マルキール著
上記2冊を読まれた上で、さらに学びたいという場合には、バートン・マルキールの「ウォール街のランダム・ウォーカー」がよいと思います。バートン・マルキールは、50年ほど前からインデックスファンドの必要性を説いていた著名な経済学者です。
バートン・マルキールのメッセージも前の2人と同様で「個人投資家は、アクティブファンドよりインデックスファンドを買ってじっと持っている方がはるかに良い結果を生む」というものになります。
本書が前の2冊と異なるのは、マーケットの歴史やファイナンス理論も交えた、より詳細な議論がされている点になります。インデックス投資の理論的支柱という位置づけの本だと思います。上記2冊に比べて分量が多いので読むのに時間はかかりますが、その分インデックス投資への理解が深まると思います。